酸味のあるコーヒーが嫌い、という人多いと思います。
かくいう私もその一人です。
正確にはその一人でした。
ところが、焙煎してからの鮮度にこだわっているお店の豆を買って、自分で挽いたときの香りと飲んだときに感じられる酸味はそれはそれは美味しいものでした。
コーヒーの酸味は複数あり、私が嫌いだった酸味はなんのことはない焙煎してから日数が経過した低品質な豆のコーヒーを飲んでいたことによるものでした。
焙煎してからの鮮度が重要

それまでコーヒーを買うときは粉よりも豆のほうがいいんだろうなぁくらいの感覚でした。
焙煎してからどのくらい経過しているのか、焙煎はどの程度までしているのかといったことは意識したことはありませんでした。
どんな豆をいつ焙煎したかわからないコーヒーを買っていれば、美味しくない酸味のあるコーヒーに出会う確率はとても高いわけですから、酸っぱいコーヒーが嫌いになるわけですよね。
経時劣化した豆はどんなに高級な豆でも美味しくない、その豆にあった焙煎方法で焙煎してすぐに豆を挽いて飲むのが一番いいというのが答えになるそうです。
焙煎後の豆の変化

コーヒーは時間が経つと酸味が出てしまうことから豆が「酸化」しているのだと思っていましたが、それだけではないようです。
「コーヒーの科学」によると焙煎してからのコーヒー豆の変化は3つあります。
- ステイリング
- 香りとガスの損失
- 酸敗
順番にみていきます。
焙煎後のコーヒー豆の変化1:ステイリング
焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンと呼ばれる物質は水分子と反応すると加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、pHが低下してすっぱくなるそうです。
ホットプレートなどで保温しているコーヒー液では数十分、焙煎豆が吸湿したときも常温で1〜2日で違いがわかるくらいに変化するそうです。
よくファミレスや空港のラウンジなどでドリップしたコーヒーがサーバーに入った状態でホットプレートで長時間保温されているのを見かけますが、酸っぱく感じることが多い気がします。
それはステイリングによって酸味が強くなってしまっているということなんですね。
焙煎後のコーヒー豆の変化2:香りをガスの損失
焙煎した直後からコーヒー豆からは炭酸ガスと一緒に香り成分が抜けていきます。
焙煎したての豆を挽いてお湯を注ぐと豆がもこもことふくらむのは豆に含まれる炭酸ガスによるものです。
鮮度が落ちると豆は膨らみにくくなり、成分の抽出効率も落ちます。
常温なら10~15日で違いがわかるくらいに変化するそうです。
「美味しく飲めるのは焙煎後2週間以内」という自家焙煎のお店が多いのはそのためだそうです。
ちなみに、焙煎度合いにより炭酸ガスが含まれる量は変わるので、極端な深煎豆などは膨らみにくくなります。
焙煎後のコーヒー豆の変化3:酸敗
酸敗とは油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けることで生じる変化のことをいいます。
ちょっと難しい単語が並んでいますが、要するに空気に触れて酸化することです。
油の傷んだ嫌な臭い(酸敗臭、ランシッド)とpHの低下をもたらします。
それによって酸味が出てしまいますが、上の2つに比べると進行は少し遅めで、常温で7~8週間かかると言われています。
焙煎後のコーヒー豆の変化まとめ

まとめると、私たちが嫌いな酸味は焙煎後すぐにステイリングと香りとガスの損失によって生じ始め、さらに長期間流通するスーパーなどに並んでいる安いコーヒーなどは酸敗による酸味も加わるため、酸味がある=不味いコーヒーというイメージが植えついているようです。
つまり、美味しいコーヒーに出会うためには焙煎からの鮮度が命になるわけです。
スペシャルティコーヒーやシングルオリジンなど仕入れる豆にこだわり、さらに焙煎度合い、焙煎からの日数にこだわるコーヒーショップで豆を買うことが一番近道だと思います。
コーヒー豆の鮮度を保つ保管方法
コーヒーの科学で推奨されている焙煎後のコーヒー豆の保管方法には3つ重要なポイントがあります。
- 吸湿を避ける
- ガスが抜けるのを防ぐ
- 酸化を防ぐ
ステイリングや酸敗は温度が高いほど進行しやすいため、低温保存も有効な方法です。
冷凍庫での保管が推奨される理由はここにあります。
ただし、冷凍庫から出した豆が急激に温かく湿り気のある空気に触れると一気に吸湿する可能性があるのでその点は注意しなければいけませんね。
焙煎からの鮮度にこだわり美味しいコーヒー豆を買うことのできる土居珈琲では購入すると、一枚の紙が封入されており、そこには「購入した豆を冷凍保存しないでください」と書かれています。
その心は、焙煎してから2−3週は常温保存で美味しく飲める期間なので、その期間に飲みきることを推奨しており、冷凍してから取り出すときの吸湿を避けてほしいというメッセージでもあります。
コーヒーの科学の中でも、
「一番いいコーヒーの保存方法」は「できるだけ長期保存しないこと」と書かれています。
産地にこだわった豆を焙煎してからの日数に気をつけて美味しく飲める期間で飲みきってしまうのが一番いい保管方法と言えるのかもしれませんね。
スーパーで売っているコーヒー豆は?
スーパーなどに並んでいる豆は鮮度を保つために、気密性を高めるため真空パックになっていたり、炭酸ガスだけを逃がすワンウェイバルブを使ったガスバルブ包装が用いられています。
ただし、いつ焙煎したかわからない豆であることを考えると、経時的な劣化がないといえず美味しいコーヒーを求めるという点ではなかなか手が伸びなくなります。
自家焙煎しているお店で焙煎してから日が浅い豆を買うにこしたことはないですね。
これはほんとに実感。一度鮮度の良い豆を経験すると、スーパーで豆を買う気になれません。笑
鮮度の良いコーヒーを手に入れるには

結論は一度にたくさん買うよりも、2〜3週程度で飲みきれるくらいの量を焙煎した日がわかるお店で自分の好きな焙煎度合いの豆を買うのが一番良さそうですね。
- 豆の産地がわかる:スペシャルティコーヒー、シングルオリジン
- 焙煎日がわかる:常温保存で2−3週で飲みきれる量を購入
- 焙煎の度合いがわかる:自分の好みの焙煎度
私は最初通販で豆の産地と焙煎からの鮮度にこだわったお店から買って、コーヒーの味がこんなに違うのかと衝撃を受けました。
おすすめのコーヒーショップ
最初のお店は北海道にあるコーヒーショップの「珈琲キャロット」です。
コーヒー豆焙煎の全国大会で優勝されるほどの焙煎の腕の持ち主が自家焙煎からの鮮度を大事にしているお店です。
お試しセットで200gの豆を2種類買えるのですが、定期便の仮申込をすると200gx3種類に増えます。
飲んでみてからでも定期便のキャンセルできますので仮登録して3種類の豆を飲み比べてみることをおすすめします。
個人的には最初のお試しセットに含まれている、「ブラジル セーハ・ダス・トレス・バハス 中煎り」の香りと味が大ヒットでした。
酸味が美味しいと感じた最初のコーヒーです。
その後、コーヒー豆は鮮度が命ということがわかってから、産地と焙煎にこだわるお店を選ぶようになりました。
まずは有名なところからと思い、注文したのが土居珈琲。
焙煎にかなりのこだわりを持っており、注文を受けてから焙煎し、その日に発送してくれます。
鮮度抜群ですね。
最初のお試しセットに入ってくる「グアテマラ カペティロ農園 フルシティロースト」はコーヒーの甘みを感じられるとても美味しいコーヒー豆です。これはおすすめ!
まとめ
美味しいコーヒーに出会うためには焙煎してからの鮮度が重要です。
このことを知るだけで、スーパーや大手のコーヒーチェーン店が売っている高いコーヒー豆が必ずしも美味しいとは限らないことがわかります。(いやむしろ美味しくないことも多いか。。)
豆の産地や焙煎の仕方にこだわり、かつ焙煎からの鮮度にこだわったお店からコーヒー豆を買ってみてください。
これまで嫌いだったコーヒーの酸味が美味しく感じられますし、甘みすら感じられ、香りも段違いだと思います。
ぜひ鮮度にこだわってコーヒー豆を買うということを一度試してみてください。
・コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか 旦部幸博 講談社 2016
・極める 楽しむ 珈琲辞典 西東社編集部 2017